リクイグアナさんからお恵みをいただく。

リクイグアナさんからお恵みをいただく。 アイキャッチ

ガラパゴス諸島サンタ・クルス島のチャールズ・ダーウィン研究所では、リクイグアナが保護されています。
リクイグアナは研究所を訪れた人たちにも見られるよう飼育場に展示されていて、その愛くるしいわがままボディ(=大切にされているあまり、やや太め)でみんなの人気者です。

チャールズ・ダーウィン研究所のリクイグアナ

そして、ここダーウィン研究所の植物部門ガラパゴス・ベルデ2050に私は所属していたわけですが。
普通に考えれば、植物部門の我々はこのリクイグアナと何の関係もなさそうです。
しかし意外な形で絡みがあり…お恵みをいただいておりました。

↓ガラパゴス・ベルデの活動内容はこちらをご参照ください!

保全活動に興味がある人に考えてほしい、「植林」という言葉

きっかけはサボテン!

ガラパゴスの固有種であるウチワサボテンはもちろん私たちが業務で常日頃接触する植物。
普段私たちはサボテンの実を採取し、種を取り出し発芽させていくのですが。
このように普通に採取されたサボテンの種と、動物の排泄物から採取したサボテンの種は根の生え方が異なるのです。
その事実は既に判明していたのですが、それぞれの成長率や生存率などを検証するため、比較モデルが必要となりました。

そのためにはある程度サンプル数が必要です。
しかし、どこで動物の排泄物を採取するか?
それができたとして、都合よくそこから求めているウチワサボテンの種が採取できるか?

…あっ。

すぐ近くに、私たちのリクイグアナがいるじゃないですか!

チャールズ・ダーウィン研究所のリクイグアナ②

サボテンの実や花が主食のリクイグアナはまさにうってつけのお方だったのです!

というわけで、ご協力いただくことに。

リクイグアナの担当部とこちらのリーダーのパティが話をつけ、リクイグアナにはこちらが指定したウチワサボテンの実を期間中お召し上がり頂くことにしました。
よしよし、これで準備は完了です。

さあ、誰が採取に行くか。

私含めチームメンバーは内心みんなハラハラしていたと思うのですが、リーダーのパティから指名されたのは、スペイン人ボランティアのパブロ君。
心の広い彼は「えっ!?」とも漏らさず、にこりと微笑んで「わかりました、いってきます」と言いました。
生物学者の鑑…!

リクイグアナの食事時間から計算し、そろそろお恵みが頂けるという時間を見計らって、リクイグアナの飼育場に彼は行くことになったのです。

誰よりも早く、お恵みをキャッチする。

お恵みはとれたてを頂くのが最重要です。
なぜなら、早く頂かなければフィンチを始め他の野鳥のライバルたちがつついて種を食べてしまうから。
飼育場は囲いはあるものの、天井はありません。
そばで待ち構える多くの野鳥ライバルたちにパブロ君は勝利しなければなりません。

しかし責任感の強い彼はこの厳しい争奪戦の中、見事とれたてのお恵みをキャッチできたのです!

ここでひとつ問題なのは、この現場には一般観光客=ギャラリーが沢山いたこと。

想像してみてください。
動物園でパンダを見ていたら突然飼育場に外国人が入ってきて、迷うことなくパンダのお恵みを回収する。
場内騒然になりますよね。
当然、この現場でも同様に超ざわつくわけでございます。

↓「私が生産しました」という顔のリクイグアナチャールズ・ダーウィン研究所のリクイグアナ③

しかしパブロ君、どこまでも責任感が強かった…!

そう、この任務を任されたパブロ君は大変責任感が強かったのです。
「鮮度が落ちないうちに、一刻も早くこのお恵みを研究室に持ち帰らなければ」と、騒然とした場内を放置してギャラリーに何の説明もなく逃走。

残された場内、わけがわからずパニック。

その様子を何も知らなかった私たちは、戻ってきたパブロ君に
「おかえり~早かったね!」
「おお、これは良いお恵みだね」
とのんびりと声をかけ実にほのぼのとしておったわけですが、しばらくして総務部から電話があり、

「男がリクイグアナの飼育所に入ってきて糞を掴んで逃げて行ったとお客さんから報告があったんだけど、何か知らない?」

…通報されてる!\(^o^)/

この一件から、飼育場にお恵みを頂戴に伺う際はパブロ君もギャラリーに説明するよう気をつけるようになったそうです。

それにしても、きちんと彼はダーウィン研究所のスタッフユニフォームも身に着けていたのに…。
わざわざとれたてのお恵みをキャッチしていく人なんて怪しいとしか思われないですかね。
まあそりゃあ驚きますよね…。

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ABOUTこの記事をかいた人

ガラパゴスバットフィッシュ愛好家、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフ。著書『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん― ガラパゴスの秘魚』(さくら舎) 。 たまたま本で見たガラパゴスバットフィッシュに大恋愛し、大学在学中に2度ガラパゴス諸島に渡航、バットフィッシュを観察。 卒業後は、ガラパゴス諸島のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティアスタッフとして活動。およそ1年半をガラパゴス諸島及びエクアドル本土で生活した。現在、ガラパゴスバットフィッシュやガラパゴス諸島に関する寄稿、トーク、講演、メディア出演等を行っている。